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コーデ週記と日々のこと。

読書感想 角田光代「坂の途中の家」。同じ年頃の娘がいる母として。

こんばんは、あーるです。珍しく読書感想。大分前にドラマ化されるというニュースで興味を持ちました。が、残念ながらWOWOW未加入なのでたまには読書、と原作を手に取ったのですが…途中で手を止めることが出来ずに貪るように一気に読んでしまいました。f:id:rno670:20190320000821j:image

 

 

あらすじ

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇に自らを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの光と闇に迫る、感情移入度100パーセントの心理サスペンス。 

 Amazonより

作者の角田光代と言えば、映像化も多い作家さんです。私は同じ映画をあまり何度も観ませんが、3回は見ているのが「八日目の蝉」。ラストシーンは何度見ても胸打たれます…お引っ越し記事じゃなくて観直してから感想をあげたいところです。

 

感想

主人公の里沙子の娘はイヤイヤ期まっただ中。ほぼ同じ年齢の娘を持つ身の母として、身につまされる描写に息苦しくなるほどでした。違う点と言えば、里沙子の娘は一人目で、私の場合は二人目であること。ただ、一人目の息子を産んだ頃を思い起こせば…思い詰めることは今より本当に多かったです。

しかし、イヤイヤ期に辟易する母親の心情をここまで言い当てられるとドキッとします。子どもが遊び食べをしながら千切ったパンを投げつけたくなる…とか。

 

補充とはいえ裁判員に選ばれたことにより、児童虐待の被告人と周囲の人々の状況を目の当たりにしていく里沙子。読み進めながら薄々とは感じていたけれど、被告人である彼女を通して自分を裁いていたのかもしれないと気付く…その下りはさらに読んでいる私にも突きつけられるようで。

 

正直、私だって子どもを叩いたことは…ある。一度もない人は「うわあ」と思うかもしれないですが。叩かないまでも、無視したり、問いかけに気のない返事をしていたりすることも…結構、ある。

この本を読むにあたって「ちょっと今これ読みたいからすごろくは後にしよ」とか子どもたちに言っちゃってました…。あと、旦那に「これどう、面白い?」と聞かれたのですがスンナリ薦めていいものか迷います。その迷いの意味を見極めなくては。

里沙子と夫、儀両親、実の母…さまざまな身近な人とのやりとりが少しずつ身に覚えがあるようで怖いような気持にもなりました。

 

章を追うごとに裁判の一日目、二日目、三日目…と様々な証言を聞くことで何が本当なのかだんだん判らなくなっていく…。

途中からこの話は被告人の事なのか里沙子の事なのか、いや私のことなのか?頭がクラッとなりそうでした。ほんの少しずつのズレが積み重なって追い詰められていくこと、閉塞感のある専業主婦の育児だからというのもあるけれど、育児以外でもあり得ると思います。

里沙子は、坂の途中からどこへ向かうのだろうか。ハッキリとは描かれないけれど最後に言いたいことを言えた彼女なら、迷いながらも進んで行けると信じたいです。

 

裁判員に選ばれるとこんな風なんだ…という意味でも面白く読めました。自分の日常に全く関わりのなかった人のことをこんなにも考える。そこにはどうしても自分と照らし合わせることが出てくるのだから…否応なしに自分と向き合うことにもなるのかもしれません。

 

ここから先は本の感想からは直接離れますが。 

虐待のニュースは悲しいことに途切れることはないけれど…他人事じゃないと、思う。自分は苦しさを口に出せる人がいたこと、子どもを産む前に鬱になったことで(もう治っていて周囲も知っている)追い詰められやすいタイプだと自覚出していたことは良かったのだと思います。書き出すと長くなるので、いつかきちんと振り返りたいですね。

 

ドラマについて 

で、俄然ドラマが見たくなってしまいました。内容全部知っちゃったけど…公式サイトで作者もコメントしてますが、この自宅、裁判所、義実家、くらいの絵的に動きの少なそうな話をどう映像化するのか?興味深いです。見えない部分の動き、心の動きは凄ーく多いですが。脚本は「人魚の眠る家」の篠崎絵里子さんとのこと。

 

www.r-coordinate.com

www.wowow.co.jp

 

WOWOW初回放送は無料だそうです。

以上、「坂の途中の家」の感想でした。ドラマ観たい…!

 

坂の途中の家 (朝日文庫)

坂の途中の家 (朝日文庫)

 

 

八日目の蝉

八日目の蝉